2026年第1四半期に始まった米国・イラン軍事衝突、そしてイランによるホルムズ海峡封鎖の影響が、原油価格と世界のインフレに直接波及している。IEA(国際エネルギー機関)は今回の供給ショックを**「世界石油市場史上最大の供給途絶」**と評価している。

価格推移

2026年1月末:WTI ≒ $60/bbl
2026年3月:軍事行動開始、WTI 平均 ≒ $91/bbl
2026年4月:WTI 一時 $109、Brent $115 超え
2026年5月初旬:WTI ≒ $102、Brent ≒ $110(停戦観測でやや下落)
2026年5月7日:WTI 一時 $93台(米イラン停戦交渉進展報道)

価格はボラタイルに動いているが、1月比で60-70%水準で高止まりしている状況。

ホルムズ海峡の役割

ホルムズ海峡はオマーン湾と日本海湾を結ぶ幅 21海里の狭い海路。ここを通る原油は世界供給の約20%、LNG(液化天然ガス)も相当量。

イランによる封鎖(実質的には機雷敷設・タンカー攻撃)で:

  • ペルシャ湾岸6カ国の輸出が大幅減
  • アジア向け原油タンカーが代替ルートに迂回 → 輸送コスト急騰
  • LNG 価格も連動上昇 → 日本・韓国・欧州のエネルギーコスト上昇

ダラス連銀の試算

ダラス連邦準備銀行が2026年に発表したワーキングペーパー “The Impact of the 2026 Iran War on U.S. Inflation” は、封鎖期間別の米国インフレへの影響を試算している:

封鎖期間ヘッドラインPCEへの累積影響コアPCEへの影響
1四半期+1.09pt+0.36pt
2四半期+1.49pt+0.46pt
3四半期+1.83pt+0.53pt

つまり、封鎖が長期化すれば米国インフレ率は 2pt 近く押し上げられる可能性。Fed が利上げを再開せざるを得ない局面になる、というのが Gundlach・Drukenmiller がそろって警告してきたシナリオ。

市場の織り込み変化

封鎖前後の市場予想変化:

  • Fed 利下げ織り込み(2026年内):3回 → 1回
  • 2年物UST金利:3.85% → 4.30%(+0.45pt)
  • 金価格:2,800 → 3,200ドル
  • ドル指数:99 → 102(一時的、その後弱含み)

特筆すべきは金とドルが同時に上昇したこと。通常はトレードオフだが、地政学リスク下では両方が「逃避先」として買われる珍しいパターン。

識者の連鎖反応

このイラン情勢を受けて、複数のマクロ識者が立て続けに警告を発した:

  • Gundlach(DoubleLine):利下げではなく利上げの可能性、米国株にダメージ
  • Fitzpatrick(Soros Fund):18-24ヶ月の痛み、原油高で長期化
  • Dalio(Bridgewater):1970年代型スタグフレ再現、ドル下落と債務危機

各人の専門領域・時間軸は異なるが、「インフレ再加速→金利上昇→株価下落→ドル下落」という構造シナリオの共通項がある。

Voicestack の視点

ホルムズ海峡封鎖は、いつ解除されるか不確実だが、仮に5月以降に正常化しても影響は数ヶ月残る。サプライチェーンと在庫の調整に時間がかかるため。

注目すべきは、米国・サウジ・UAE・カタール・イラクが「OPEC+ 増産で対応」を試みていること。これがどこまで成功するかが、原油価格・インフレ・Fed 政策の三段論法を決める。次の3-6ヶ月、毎週の OPEC+ 月次レポートと米国 EIA 在庫データが最も重要なマクロ指標になる。


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